医療課題
慢性的なリソース不足により、医療機関は量・質ともに不十分であることに加え、病弱・身体虚弱な子どもや妊婦に医療が十分に行き届いていない状態です。さらに特に都市部では生活習慣病の増加が深刻化しているものの、認知度が低く、医療機関を受診している患者も少ないことから、正確な状況把握や適切な介入が行われていません。また、住民自身が身体や健康について正しく理解できていないというヘルスリテラシーの低さから、本来享有できるはずの健康が守られていないという課題を抱えています。
ネパール僻地の現状
妊婦の検診受診率
30.1%
(ネパール平均:49.8%)
施設分娩の割合
14.4%
(ネパール平均:54.2%)
5歳未満児の下痢
90.7%
(ネパール平均:38.5%)
現地プロジェクトマネージャー
母乳が足りなくなると、水牛の牛乳を飲ませるているなど、産後も適切な対応がとられていません。また、妊娠しても検診があることを知らず、妊婦検診をきちんと受診していないケースもあります。
肥満
18.5%
(都市部:33.5%)
高血圧患者
23.8%
(都市部:25.2%)
高脂血症
10.5%
(都市部:9.7%)
現地NGOスタッフ
特に地方部で生活習慣病はあまり認知されておらず、罹患していても知らずに医療機関を受診していない人も多い状況です。また、死因として心疾患が増加しており、その影響は年々深刻になっています。
ネパール僻地の課題
医療機関側の課題
数が少ない・遠い
ネパールは、その経済的な理由から、特に地方では医療機関が少なくなっています。そのため人々の身近には医療機関がなく、少し離れたところにあったとしても、舗装されていない道路も多いため普通の車では走れず、公共交通機関もないため、何時間もかけて歩いて行かなければなりません。体調不良時や妊婦さんにとって、何時間も歩くことは非常に負担が大きく、必要な時に受診しにくい環境となっています。
できることが少ない
地方の医療機関では、医療従事者・薬剤・医療機器などの医療資源の慢性的な不足も深刻です。医療従事者、特に高度な専門職は首都カトマンズで、その多くは私立医療機関で勤務しているため、地方の患者はなかなか受診することができません。また、日本では当たり前にある機材も揃っていなかったり、薬も数十種類しかない、頻繁に品切れしているなど、十分なサービスが提供されているとは言えない状況です。
治療が分断される
ネパールでは、医療機関を受診すると医療職が紙カルテを作りますが、それを患者さんに渡します。患者さんは紙カルテを持ち帰り、多くのケースで再診時に持ってくるの忘れるため、経緯を確認した上で医療を提供するのが難しくなっています。また、診療の元になるデータがないので、医療職同士の連携が難しい、どのような薬剤が足りていないかを判断することも難しいなどの課題に繋がっています。
住民側の課題
日々健康的な生活習慣で過ごせていない
手に入る食材や文化的経済的な背景から、炭水化物や脂質の多い食事を慢性的に取っています。また、野菜も少なく、「運動」の習慣もないため、農業や工事現場等の肉体労働をしている人以外は慢性的な運動不足に陥っています。喫煙・飲酒習慣に対しても「不健康」という意識は低くなっています。また、地方特有の事情として、多くの家庭では家の中で薪で炊事をしていることで、呼吸器にダメージを与える生活になってしまっています。
正しい判断が困難
健康教育が行き渡っていないため、健康や医療に関する知識がなく、伝統的な医療や祈祷師等を頼る人が多い状況です。 もちろんそれらも大切ではあるのですが、原因が明確な病気やけがなどの際に必要なセルフケアや受診判断ができないので悪化したり手遅れになったりというケースも発生しています。