医療を頼れる仕組みづくり
現地の人々が主役の、医療を頼れる仕組みづくり
医療資源が不足する地域でも必要な医療にアクセスできる環境を目指し、「地域の力」と「テクノロジー」を活用した地方向け医療提供システムづくりに取り組んでいます。
地元の人たちで運営できる仕組みを導入することで、誰もが手の届く(Affordable)持続可能な(Sustainable)医療を頼れる仕組みを目指しています。
医療提供を支える「地域の力」
地域でのケア(Community-Based Care)
地域住民から雇用した「地域保健スタッフ」が 専用のスマホ用問診アプリ「ASHAConnect」を活用しながら、ケアを必要とする妊婦・子ども・生活習慣病患者を訪問。 地元の人だからこそ、地域の住民にしっかり寄り添える環境を整えています。
医療施設でのケア(Facility-Based Care)
困ったときは近くの医療機関で見てほしい。 遠くの医療機関に行かなくても、 一定水準の医療を受けられるよう、医療提供システムの整備を進めています。
ネパールでは、一般的に患者さんが紙のカルテを持って帰り、医療機関には簡単な台帳しかありません。しかし、再診時にそのカルテを持参する患者さんは10~20%。そのため、医療従事者は診療のたびに最初からやりなおすという事態が発生しています。このような状況を解消するために、テクノロジーを使いながら、患者さんが自分の情報を保持できる環境を維持ながら、医療機関でも必要な情報が保存される環境を構築しています。
医療提供を支える「テクノロジー」
地域保健スタッフ向けスマホ用問診アプリ「ASHAConnect」および医療機関向け電子カルテ用ソフトウェア「NepalEHR」を開発、ASHAConnectおよびNepalEHRから取得したデータを統合・保管する「共通データベース」の構築に取り組んでいます。これらを組み合わせて導入・利用することで、医療を拡大や地域に最適化された保健・医療サービスの提供を実現します。
ASHAConnect
地域から雇用した
地域保健スタッフ向けの
スマホ用問診アプリ
共通データベース
ASHAConnectと
Nepal EHRで記録した
データを保管
NepalEHR
医療機関向けの
電子カルテ用ソフトウェア
治療・診断履歴をデータとして保管
ASHAConnect
地域保健スタッフ向けスマホ問診アプリ「ASHAConnct」は、妊産婦ケア・乳幼児ケア・生活習慣病ケアの3領域に対応。医療機関にアクセスしにくい地域でも、ケアを必要とする人を訪問し、簡易ケアを提供しています。
アプリを使用し問診を行うことで、医療知識が豊富でない地域保健スタッフでも適切な指導やリスクの発見が可能です。アプリの指示に従って問診を行うことで、服薬・生活習慣改善・医療機関受診の推奨などの指示が表示されます。また、地域保健スタッフ向けの教育コンテンツや訪問すべき患者さんの管理も可能です。
ASHAConnectでできること
・訪問・問診記録
・リスク検知・アラート
・活動管理
・地域保健スタッフ向け健康教育
教育コンテンツの内容
・生活習慣・環境改善について
・服薬指導について
・生活習慣病について
・出産準備について
・家族計画について など
実際の活動
地域保健スタッフ (Community Health Worker: CHW)
コミュニティ内から雇用した有給の保健スタッフです。妊娠中や出産後の女性、生活習慣に起因する非感染性疾患の患者を定期的に訪問し、ASHAConnectを使いながら、健康状態の確認やカウンセリングを行っています。
定期的に研修を実施しており、一定の知識をもった保健スタッフが
健康教育や受診勧奨を行うなど、地域で健康の保持増進に貢献しています。現在リク地区8人、ガダワ地区17人を雇用し、これまでに地域の患者約2,000人へケアを提供しました(2024年10月現在)。
地域保健スタッフの活動
情報収集
医療機関や地域を訪問し情報収集を行います
患者のリストアップ
妊産婦・乳幼児・生活習慣病の患者をリストアップします
初回訪問
健康状態を把握するために患者さんの初回訪問を実施します
アドバイザリー
月1回または必要に応じてプロジェクトマネージャーや専門家にケア方針を相談
定期訪問
月1回の家庭訪問で健康状態の確認や指導実施し、リスクが発見された場合は医療機関へのリファーを行います
医療情報管理ソフトウェアの導入
「患者が紙カルテを持って帰ってしまい、再診時に持ってこない」「医療機関に適切な情報が保管されておらず、現状把握もできない」という課題を解消すると同時に、「患者さんが自分の健康の情報を自分で保持できる」という現状のメリットを活かす形で、医療情報管理ソフトウェアを導入しています。
ネパールでは大病院では一部電子カルテが使われていますが、地方の小規模医療機関では導入されていません。そこで、私たちは地方の小規模医療機関の運営やオペレーションに寄り添いながら、ソフトウェアをカスタマイズして、医療情報を電子的に管理できる環境を構築しています。
最適化されたソフトウェアで医療情報が適切に管理されることで、医療の質の向上だけでなく、医療機関のスタッフの業務負荷を下げることにも貢献しています。
また、患者さんには印刷して渡しているので、他の医療機関を受診したときにも、見やすい形でその医療機関の医療職にこれまでの経緯を伝えることができるというメリットもあります。
保健・医療サービス用 ID
ネパールでは地域内に同姓同名が多数存在することに加え、住所や生年月日も定かではない場合が多いです。そのため個人を特定する統一したID(HealthConnect ID)付与し、保健・医療サービスで利用できるIDカードを日本の専門家監修のもと作成しました。プロジェクト実施地の全戸へ配布予定で、現在までに簡易カードを約3万人に配布しました。(2023年8月現在)