2024/05/15
令和5年度ヘルスケア産業国際展開推進事業「カンボジア・ネパール・コンゴ民における新生児蘇生法教育デバイス・導入支援サービスの基礎調査プロジェクト」において基礎調査を完了
特例認定非営利活動法人 ASHA(以下、ASHA)は、経済産業省(執行団体:一般社団法人Medical Excellence JAPAN)の「令和5年度 ヘルスケア産業国際展開推進事業」に採択された、エレコム株式会社(以下、エレコム)を主幹とする共同プロジェクト「カンボジア・ネパール・コンゴ民における新生児蘇生法教育デバイス・導入支援サービスの基礎調査プロジェクト」に参画し、基礎調査を完了したことをお知らせします。
本事業では、エレコムが提供する新生児蘇生法訓練用シミュレーターおよび研修プログラムの普及を目的とし、対象3カ国のうちネパールにて、実践されている医療教育の制度・実施状況、ニーズ・規制の有無、市場動向、競合動向などについて基礎調査を担当し、2024年3月に完了しました。
今回の調査結果を基に、今年度より①既存研修へのシミュレーション教育の組み込み、②現地の医療者向け講師養成・訓練およびサポート、③新生児蘇生法におけるシミュレーション教育の効果評価およびデータ収集を目的とした実証プロジェクトを開始します。
関連リンク:
・令和5年度ヘルスケア産業国際展開推進事業 最終報告会:
https://medicalexcellencejapan.org/jp/all/detail/629/
・エレコム株式会社 ニュースリリース:
https://www.elecom.co.jp/news/release/20230822-01/
■ネパールにおける新生児死亡率と改善に向けた課題
世界的に5歳未満児死亡率は大幅に低下しているものの、新生児死亡率は5歳未満児死亡率のうち最大数を占め、その減少は緩慢です。UNICEF(2024)によると、ネパールにおける新生児死亡率(推定)は出生数1,000人あたり16人と、日本の1,000人あたり0.8人と比較すると非常に高い状況です*1。新生児死亡の主な要因として、早産や感染症に加え出生時の呼吸循環不全(新生児仮死)があげられます*2。新生児仮死により亡くなる新生児は、世界の新生児死亡数のうち約23%を占めていますが*3、その多くは適切な新生児蘇生法によって救命できると言われています。
多くの途上国では、新生児蘇生法に熟練した医療従事者が不足していることや、実践的な教育の機会が不足していることが大きな課題となっており、ネパールも同様の課題を抱えています。
出典:
*1 Levels and trends in child mortality. UNICEF DATA. (2024, March 13). https://data.unicef.org/resources/levels-and-trends-in-child-mortality-2024/
*2 World Health Organization. (n.d.). Newborn mortality. World Health Organization. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/newborn-mortality
*3 Yitayew, Y. A., & Yalew, Z. M. (2022). Survival status and predictors of mortality among asphyxiated neonates admitted to the NICU of Dessie comprehensive specialized hospital, Amhara region, Northeast Ethiopia. PloS one, 17(12), e0279451. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0279451
■事業目的
今回の事業では、ネパール国内で新生児蘇生法の知識と技術を広く普及させることで、新生児死亡率の低下を目指します。現地の医療従事者や医学生・看護学生に対して、実践的なシミュレーション教育を提供し、臨床現場で直面するさまざまな状況に対応する能力向上に貢献します。
■実証プロジェクト概要
本プロジェクトでは、ネパールにおける「新生児蘇生法訓練用シミュレーター」を活用した実践研修の導入に向けて、研修プログラムおよびその効果の検証を行います。第1フェーズでは現状分析とトライアル研修、第2フェーズでは現地研修プログラムへの組み込みの実証を予定しています。
第1段階:現状分析とトライアル研修
ネパールにおける研修プログラムの現状やニーズを把握するために、国際機関へのヒアリングを実施するとともに、現地での研修を視察し必要なデータを収集します。さらに、日本人の専門家によるシミュレーション教育のトライアルレクチャーを実施し、その効果と受容性を評価します。
第2段階:現地研修プログラムへの組み込み
第1段階のフィードバックを基に、ネパールでの研修プログラム実施に向けた具体的な提案を行います。また、現地の医療者向けの研修プログラムを提供し、講師養成・訓練を行うことで、現地の医療者だけで研修を実施できるようにサポートを行います。研修の前後には、アンケートによる自己評価や実技試験で新生児蘇生法に関する知識・技術を測定・評価し、研修プログラムの効果測定を行います。